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ヴォート XF5U試作戦闘機

Vought XF5U "Flying Pancake"

合衆国海軍航空隊

XF5U
XF5U−1原型機(新プロペラ搭載後)

 航空機が高い揚力を得るためにはアスペクト比(主翼の縦横長比率)が大きな主翼を使用するの が当然であるが、第二次大戦前にNACA(米国航空諮問委員会。現在のNASA(米国航空宇宙 局)の前身)へ勤める空気力学者C・H・ジンマーマン(Charles H. Zimmerman)は縦横比が極端 に小さい主翼を持つ航空機の設計を行った。この設計ではほぼ円形の主翼の両端に大きなプロペラ を取り付け、プロペラ後流を翼端渦(主翼の両翼端から後方へ発生する空気の渦流。後方へ機体を 引っ張る力となるため飛行速度や航続距離を高めるのに抵抗となる)と反対方向に回転させること で、翼端渦発生による空気流損失を大幅に削減できる理論であった。
 NACAで幾つかの模型を作成し自身の理論を実証したジンマーマンは、1937年チャンス・ ヴォート社へ移籍し、遠隔操縦の模型により目覚ましい実験結果を得るに至った。その成果に米国 海軍が目を付け、ヴォート社が作成した実物大模型に対してV−173の名称を与え、1939年 に開発続行を許可した。
 技術実証用の機体として80馬力のコンチネンタル・エンジンを2基搭載したV−173は19 42年11月23日に初飛行し、飛行実験では220km/hの最高速度と強い向かい風の状態では滑 走無しで離陸するという性能を示した。しかし、この実験機はエンジン出力が低く低速時の操縦特 性が非常に悪かったと伝えられる。
 V−173の実験飛行と並行して海軍はXF5Uの名称で1942年9月に実用戦闘機の開発も 発注しているが、戦時中でF4Uの 製造に手一杯だったヴォート社はV−173による基礎研究に時間を取られ、XF5U原型機の制 作は遅々として進まなかった。
 V−173を大型化し、外皮にヴォート社の特許であるメタライト板(バルサ材のハニカム構造 にアルミニウム板を張ったもの)を使用し非常に頑丈に作られた原型機はツインワスプエンジンを 2基搭載し、F4Uと同型の大直径プロペラを装備した原型1号機が皆の前に姿を現した時には対 日戦も終戦を迎えており、戦闘に参加する機会は巡ってこなかった。
 ヴォート社ではハミルトン・スタンダード社製の新型プロペラに交換した原型機は700km/h近 い最高速度と非常に短い滑走距離を実現でき、将来エンジンをターボプロップ化することでほぼ垂 直に近い離陸と800km/hという高速発揮を目論んでいたが、原型1号機は地上滑走試験しか行わ れず、飛行試験直前の1947年9月に米国海軍は完全な計画破棄を決定、不運の機体は一度も空 を飛ぶことなくスクラップにされてしまった(ただし非常に頑丈な機体であったため解体用の鉄球 をぶつけてもなかなか壊れず、スクラップにするのに手間取ったというオチがついている)。
 大直径プロペラにより前方投射型兵器(ロケット弾等)の追加搭載がほぼ不可能であることが不 採用の大きな理由の一つであるとの説がある。

機体詳細データ(XF5U−1(原型1号機)一部データは設計値)
全長 8.56m全高 5.08m
全幅 9.91m揚力面面積44.13m2
自重 5,945kg最大重量 7,585kg
最高速度685km/h(推定)上昇限度10,500m
航続距離1,140km巡航速度不明
発動機プラット&ホイットニー R-2000-7「ツインワスプ」空冷星形複列14気筒 1,350馬力×2基
乗員数1名総生産機数1機
武装(提案)12.7mm機銃×6または20mm機関砲×4、機体下に1,000lb(454kg)爆弾×2
主要タイプ V-173:小型の技術実証用機体
XF5U-1:原型機の米海軍呼称。メーカー呼称はVS-315