マーチン・ベーカー M.B.5試作戦闘機

Martin-Baker M.B.5

英国空軍

M.B.5
M.B.5原型機

 1929年にジェームス・マーチン(James Martin)とヴァレンタイン・ベーカー(Valentine Baker)の 二人が設立した航空機メーカーのマーチン・ベーカー航空機(Martin-Baker Aircraft)は、大手航空機メー カーの下請けを行いながら戦闘機の自社開発を夢みていた。第二次大戦開戦直前の1938年にネイピア・ダ ガーエンジンを搭載した単座固定脚戦闘機M.B.2を自社負担で試作したが、すでに引込脚戦闘機の時代と なっており、また戦争が近づいている情勢もあって、既に生産ラインが稼働している ハリケーンスピットファイアを押しのけてまで空軍 制式に採用されることは無かった。
 1942年になって同社は当時の英国で最強エンジンの一つであるネイピア・セイバーエンジンを搭載した 試作機M.B.3を作り上げた。鋼管モノコック構造に着脱式外皮というメンテナンス性の高い機体に、パッ ケージ化して交換・補給が容易となった20ミリ機関砲6門を搭載した原型機は、英空軍の飛行試験で当時部 隊配備が始まったばかりのスピットファイアIXよりも優れた性能を示した。この機体は初飛行から二週間ほど でエンジントラブルのため墜落してしまった。このときテストパイロットとして搭乗していたヴァレンタイン ・ベーカーは機体と運命を共にしている。
 M.B.3の原型2号機は1号機墜落事故の時点で製造が遅れていたため機体再設計が行われ、M.B.3 にRRグリフォンエンジンを搭載するM.B.4のプランと統合されM.B.5という新しい機体に生まれ変 わった。同機はM.B.3と胴体の一部や主脚を共通化し、メンテナンス性の高さを受け継ぎながら、冷却器 を胴体中央下部に移したことや全方位視界の優れたバブルキャノピーに変更されたこと、また大出力を受け止 めるため二重反転プロペラが採用されており、全く異なったシルエットの機体に仕上がった。
 1944年5月に初飛行したM.B.5原型機はグリフォン搭載のスピットファイア以上の性能を発揮した が、英空軍は新時代の機体として既にジェットエンジンへの移行に興味を移しており、遅れて出現した当機が 採用されることは無く、開発は終了した。1機だけ完成した原型機は1946年のファーンボロー航空ショー で公開飛行を行った後、スクラップとして解体されている(近年の航空ショーで展示されているM.B.5は レプリカ機である)。
 優秀な機体を送り出したものの、時流に乗れず制式採用を取れなかったマーチン・ベーカー社は戦後も航空機 関係の部品供給メーカーとして生き残り、ジェット時代の戦闘機に不可欠な射出座席のトップメーカーとして名 を馳せている。

機体詳細データ(M.B.5:一部計画値)
全長11.51m全高 4.57m
全幅10.67m翼面積24.34m2
自重4,188kg最大重量5,216kg
最高速度740km/h(高度6,000m)上昇限度12,190m
航続距離1,770km巡航速度不明
発動機ロールスロイス「グリフォン」83 液冷V型12気筒 2,340馬力×1基
乗員数 1名総生産機数 1機
武装20mm機関砲×4
主要タイプ M.B.2:固定脚の単座戦闘機。ネイピア・ダガーIII(805hp)搭載。原型のみ
M.B.3:ネイピア・セイバー(2,000hp)搭載の原型1機。墜落により喪失
M.B.4:M.B.3の機体にRRグリフォンを搭載した機体。計画のみ
M.B.5:M.B.3の機体設計を見直し、RRグリフォンを搭載した機体。原型1機