ハインケル He177グライフ爆撃機

Heinkel He177 "Greif"

ドイツ空軍

He177A-5
胴体下にHs293遠隔誘導爆弾を搭載したHe177A−5

 1937年に中止された「ウラル爆撃機」計画に続いてドイツ空軍省は戦争用強力爆撃機である 「爆撃機A」計画を提言した。計画された性能は当時の技術力では現実の難しいものであり、しか も急降下爆撃能力までも求められていたため、開発はさらに困難なものとなっていた。
 この開発を委任されたのがハインケル社で、同社の設計者ギュンター兄弟は飛行性能を高めるた めにあらゆる新機軸を盛り込んだ設計書を当局へ提出した。特に軍が要求した性能を満たすために 必要であった大馬力エンジンについては当時の量産エンジンでは出力不足であったため2基のDB 601エンジンを結合したDB606(2,500hp)を使用することにした。
 He177と形式名称を与えられた機体は1939年に完成したが、エンジン冷却法の未完成や 急降下爆撃に耐えるための機体補強などで極端に重量増加した機体は、設計値をかなり下回る飛行 性能しか示さなかった。しかもエンジン加熱による出火など極めて危険な要素を含んでおり、生産 前機として製作された35機のうち25機が事故で失われるほどであった。
 それでもHe177は軍に制式採用され、その後も改良が進められ1943年からDB610系 列エンジン(DB605を結合)を搭載したA−5型が生産されるようになって、初めて使い物に なる機体が軍へ納入されるようになったのである(ただしエンジン過熱や稼働率の問題は最後まで つきまとった)。
 A−5型からは「グライフ」(頭が鷲、体がライオンの空想上の動物。グリフォン)と正式な呼 称がつけられゲーリング元帥の『自慢の翼』となったが、ドイツが制空権を失いつつあったこの時 期では敵に与える損害よりも受ける被害の方が大きく、電撃戦の再来を望むべくもなかったのであ る。
 なお、A−5型には「フリッツX」やHs293などの誘導爆弾を搭載できる機体や空対空ロケ ットを多数装備した「対爆撃機用爆撃機」などの派生型も多数存在した。

機体詳細データ(He177A−5/R2)
全長22.00m全高 6.39m
全幅31.44m翼面積102.00m2
自重16,000kg最大重量31,000kg
最高速度565km/h(高度6,100m)上昇限度9,400m
航続距離3,080km(フェリー時5,500km)巡航速度不明
発動機ダイムラーベンツ DB610 液冷結合V型24気筒 2,950馬力×2基
乗員数5〜7名総生産機数850機以上
武装7.92mm機銃×3、13mm機銃×3、20mm機関砲×2、50kg爆弾×16+250kg爆弾×4
又は500kg爆弾×2、もしくは航空魚雷×2、もしくはHs293誘導爆弾×2等
主要タイプ He177V:原型機。正式にはHe177V1のように製造(計画)順に番号が付与された
He177A-0:生産前機。20mm機関砲×1、13mm機銃×3、7.92mm機銃×1
He177A-1:アラド社製作の初期モデル。装備の相違でA-1/R1〜R4の4タイプがある
He177A-3/R1:ハインケル社製の改良型。DB606A/BまたはDB610エンジン搭載
He177A-3/R2:A-3/R1型に防御武装を追加した武装改善型
He177A-3/R3:Hs293ミサイル搭載能力を付与した機体
He177A-3/R4:FuG203ミサイル管制装置を搭載。腹部に張り出しを持つ
He177A-3/R5:腹部張り出しに75mm機関砲を搭載した攻撃型
He177A-3/R7:魚雷搭載能力を付与した対艦攻撃型
He177A-4:高々度爆撃機型の提案モデル
He177A-5:構造改修型。主翼強化により吊下荷重を増加。武装の差でR1〜R4型がある
He177A-5/R5:爆弾倉後部に遠隔操作銃座を装備した機体
He177A-5/R6:前部爆弾倉2つを廃止した機体
He177A-5/R7:与圧操縦席を採用した高々度型
He177A-5/R8:機首部と尾部に銃座を追加した機体
He177A-6:追加武装と装甲強化を盛り込んだ改良型提案
He177A-7:主翼全幅を拡大した改修型A-5の呼称
He177B:改良型(He277開発の隠れみのとして付けられた呼称のため実機は存在せず)
He277:エンジンを通常の4発(DB603等)に変更した機体。別項参照