ダグラス C−54スカイマスター輸送機

Douglas C-54 Skymaster

合衆国陸軍航空隊(合衆国空軍) 他

VC-54C
米大統領専用機VC−54C”セイドリック・カウ”

 1930年代、ダグラス社はユナイテッド航空の協力の下で4発エンジンを搭載する大型旅客輸送機を 完成させた。DC−4Eと名付けられたこの原型機は、新たな旅客輸送時代の幕開けとして捉えられたが、 米国国内輸送各社からは運用コスト高という理由から受け入れられず、結局日本へ売却されてしまった (この機体を購入した日本(購入契約は大日本航空社名義だった)では、機体を解体研究して大型陸攻 「深山」開発の基礎とした)。
 原型機の失敗により若干小型・単純で経済的な機体の開発に乗り出したダグラス社は1939年5月に DC−4Aを完成させた。DC−4Eよりも一回り小型で、客室も与圧されていない機体であったが、早 速ユナイテッド航空とアメリカン航空から発注があり量産が開始された。しかし太平洋戦争が勃発し、世 界中の戦域へ物資や兵員を輸送する必要が生じた米陸軍が最初の製造グループ34機すべてを徴発してし まったため、民間機としての就航は戦争終結までお預けとなっている。
 米陸軍では当機にC−54の名称を与え、軍用型の発注も行った。堅牢な機体と信頼性の高いエンジン などで軍事輸送関係者からの人気も高く、米陸軍だけでなく海軍や海兵隊、沿岸警備隊などにも納入が行 われ、武器供与法のもとで英国空軍にもある程度の数が就役している。
 軍用として製造されたうちの1機は、客室の大規模な改修を施されVC−54Cの名を持つVIP用輸 送機となったが、この機体は型式番号よりも「セイドリック・カウ(聖なる牛)」という愛称の方が有名 である。この機体はF・D・ルーズベルト(Franklin D. Roosevelt)大統領専用機として用意された機体 で、彼をヤルタ会談に運ぶ任務に従事した(ルーズベルトは任期中に死亡したため、この機体で海外へ出 たのは2回しか無かったが、後任のトルーマン(Harry S. Truman)はこの機体を受け継ぎ55もの国々へ 外遊を行った。上掲写真の前部胴体左側面に描かれているのは訪問した国の国旗である)。
 戦後、ようやくダグラス社は民間型の製造が行えるようになったが、余剰となった軍用型の放出があっ たため純粋な民間型としてセールスされた機体は100機に満たず、戦後民間機として飛行した機体の大 半は軍放出機を旅客型に改修した機体であった。

機体詳細データ(C−54G)
全長28.60m全高 8.38m
全幅35.81m翼面積135.63m2
自重19,641kg最大重量33,113kg
最高速度451km/h(高度4,265m)上昇限度6,800m
航続距離4,023km巡航速度349km/h(高度2,590m)
発動機プラット&ホイットニー R2000-9「ツインワスプ」空冷星形複列14気筒 1,450馬力×4基
乗員数乗員4〜6名+乗客42〜50名総生産機数1,315機(ライセンス生産含む)
武装武装なし(空挺兵50名を搭載可能)
主要タイプ DC-4E:プロトタイプ。日本へ売却された(1機)
DC-4A:民間向け生産型。P&W R-2000エンジン。全機軍用に転換された
C-54:DC-4Aを軍が徴発した後の呼称。愛称はSkymaster(24機)
C-54A:R-2000-7エンジン搭載型。基本的にC-54と同型(252機)
C-54B:C-54Aの搭載燃料を増加させたモデル(220機)
C-54C:C-54Aを改修したVIP輸送機。後にVC-54Cと改称(1機改修)
C-54D:R-2000-11エンジン搭載の生産変換型(380機)
Skymaster Mk.I:英国へ貸与された機体の英軍呼称。C-54B(1機貸与)およびC-54D(22機貸与)
AC-54D:C-54Dを無線中継機に改修した機体(数機改修)
EC-54D:1962年の呼称改変で改称されたAC-54Dの新呼称
SC-54D:C-54Dを救難機に改修した機体(38機改修)
HC-54D:1962年の呼称改変で改称されたSC-54Dの新呼称
VC-54D:C-54DをVIP輸送機に改修した機体(1機改修)
C-54E:搭載燃料とペイロードを増加した改良型(125機)
XC-54F:パラシュート降下用扉を持つ軍用輸送型。試作のみ(1機)
C-54G:最終生産型。R-2000-9エンジン搭載(162機)
VC-54G:C-54GをVIP輸送機に改修した機体(数機改修)
C-54H:パラシュート部隊輸送用の提案型。製作されず
C-54J:旅客機型の内装を持つ参謀輸送機。製作されず
XC-54K:長距離飛行型に改修されたR5D-3(C-54D)(1機改修)
C-54L:C-54Aの燃料系統を新型に換装した機体(1機改修)
C-54M:ベルリン大空輸に際し、石炭輸送用に改修された機体(38機改修)
MC-54M:C-54Eを患者輸送機に改修した機体(30機改修)
C-54N:1962年の呼称改変で改称されたR5D-1の新呼称
C-54P:1962年の呼称改変で改称されたR5D-2の新呼称
C-54Q:1962年の呼称改変で改称されたR5D-3Zの新呼称
C-54R:1962年の呼称改変で改称されたR5D-4Rの新呼称
C-54S:1962年の呼称改変で改称されたR5D-5の新呼称
VC-54S:1962年の呼称改変で改称されたR5D-5Zの新呼称
C-54T:1962年の呼称改変で改称されたR5D-5Rの新呼称
C-54U:1962年の呼称改変で改称されたR5D-4の新呼称
EC-54U:C-54Uのうち1機だけにつけられた呼称
RC-54V:1962年の呼称改変で改称されたR5D-3の新呼称
JC-54:試射ミサイルの回収用に改修された機体
TC-54:操縦訓練用に改修された機体
XC-114:アリスンV-1710エンジン(1,620hp)搭載の実験用機(1機)
XC-116:防氷装置の実験用機。アリスンV-1710エンジン搭載(1機)
R5D-1:海軍へ移管されたC-54Aの呼称(58機移管)
R5D-1C:R5D-1をR5D-2の燃料系統準拠に改修した機体の呼称
R5D-1F:R5D-1を参謀輸送機に改修した機体。後にR5D-1Zと改称
R5D-2:海軍へ移管されたC-54Bの呼称(47機)
R5D-2F:R5D-2を参謀輸送機に改修した機体。後にR5D-2Zと改称
R5D-3:海軍へ移管されたC-54Dの呼称(92機移管)
R5D-4:海軍へ移管されたC-54Eの呼称(20機移管)
R5D-4R:沿岸警備隊向けに改修された機体の呼称(数機改修)
R5D-5:R-2000-9エンジン搭載型に改修された機体
R5D-5Z:R5D-5を参謀輸送機に改修した機体
R5D-5R:沿岸警備隊のR5D-5を旅客機型に改修した機体
R5D-6:C-54Jの海軍向けモデル。提案のみ
DC-4:戦後製作された純民間向け旅客機モデル(79機)
DC-4M:カナデア社でライセンス生産された機体の総称
North Star:カナデア社製造の無与圧機。カナダ空軍の輸送機として使用(24機)
C-5:カナデア社製造の全与圧機。カナダ空軍のVIP輸送機として使用(1機)
Carvair:自動車輸送用に改造された機体。英エビエーション・トレーダーズ社改造