イサベル島沖海戦

イサベル島周辺地図

転進妨害の出撃

 レンネル島沖海戦に引き続いて、二月一日にはイサベル島沖海戦が行われた。
 この海戦は、わが陸軍部隊のソロモン群島ガダルカナル島からの転進作戦(実は撤退作戦)を妨害しようとして、巡洋艦、駆逐艦、魚雷艇の快速機動部隊をもって出撃し来ったのを粉砕した戦闘である。
 この日、ソロモン海域には暗雲がたれ込め、非常な悪天候であった。この悪天候を衝いて活躍していたわが索敵機は、ガダルカナル島付近に巡洋艦二隻を基幹とし、駆逐艦数隻を随伴する敵艦隊を発見した。
 報に接したわが基地は直ちに出発の態勢をとった。命令一下、戦闘機、爆撃機をもって編成された航空部隊は密雲をついてソロモン海辺上空に出撃、直ちに攻撃の火蓋を切った。
 航空部隊の来襲に、狼狽した敵艦隊の防御砲火は、スコールを逆にしたように凄まじく空に炸裂する。舞い上がった敵グラマン戦闘機は小癪にも挑戦してきた。
 わが新鋭戦闘機は絶好の獲物とばかり、翼をひるがえしてこれに襲いかかって銃砲火を浴びせかける。必殺弾を喰った敵は一機、また一機と黒煙の尾を引いてソロモンの海の藻屑と消えていった。かくて、たちまちのうちに十七機中実に十六機を撃墜した。
 航空部隊は必死となって打ち出す猛烈な敵の防御砲火を物ともせず、巧みに弾幕を潜って突っ込み、小艦艇には目もくれず巡洋艦に向かって殺到し、猛攻たちまち巡洋艦一隻を轟沈、巡洋艦一隻小破の大戦果を挙げた。
 だが、この攻撃の際わが指揮官機は、自らの爆弾を投下し終わり離脱せんとしたとき機に敵弾を受けた。今はこれまでなりと、まっしぐらに敵艦目指して突入、壮烈鬼神も哭かしむる自爆を遂げたのをはじめ、自爆、未帰還機八機を出した。
 このイサベル島沖海戦の行われたちょうど同時刻頃、二編隊の有力敵機群が反撃のために西進してきた。
 航空部隊は直ちにこれを捕捉、二ヶ所で壮烈な空中戦を交えた。
 第一の空中戦は敵はボーイングB17重爆機、グラマン戦闘機連合の十数機であった。わが航空部隊は奮然これに挑戦し重爆四機をニュージョージア北方の海中に撃墜して全機無事に帰還した。
 第二の空中戦は、第一の空中戦と前後して、わが航空部隊は戦爆連合の敵三十機内外の大群と、幸いなるかなニュージョージア北方海上で遭遇した。たちまち軽爆撃機一機、グラマン戦闘機十二機、併せて十三機を撃墜、その他の敵機を潰走せしめた。わが損害は二機である。
 この戦果については大本営から次の如く発表された。
 大本営発表(昭和十八年二月四日十六時)
 帝国海軍航空部隊は二月一日ソロモン群島イサベル島南方に機動中の敵海上部隊を捕捉攻撃し又ニュージョージア島方面において挑戦し来れる有力なる敵航空部隊群と交戦、これに多大の損害を与えたり。
 戦果 巡洋艦一隻轟沈 巡洋艦一隻小破 飛行機三十三機撃墜(内大型爆撃機四機)
 我が方の損害 自爆及び未帰還機十機

 この海戦はこの時で終わったものではない。引き続き連日ソロモン海上において戦闘を展開、いよいよ戦果を拡大し敵に大損害を与えたのである。
 大本営からは次のように発表された。
 大本営発表(昭和十八年二月十日十五時)
 その後の詳報によれば帝国海軍部隊は二月一日以後同七日までに、イサベル島東方において、左の戦果を収めたること判明せり
 巡洋艦一隻轟沈 巡洋艦一隻撃沈 駆逐艦一隻撃沈 魚雷艇十隻撃沈 飛行機八十六機撃墜
 なお、この間における我が方の損害を左の通り改む
 駆逐艦一隻大破 駆逐艦二隻中破 飛行機十二機自爆及び未帰還

 この戦果発表のうちに魚雷艇十隻撃沈というのがある。魚雷艇は八十トンから百トン内外の小型であるが、最高四十五ノットの快速を有し、これに一、二本の発射管を備えている。
 小型のため波の荒い大洋においては使用に適さないが地中海のような内海とか、島の多い海上では高速を以て艦船に肉薄して魚雷を発射する奇襲兵器として侮りがたい性能を有し、搭載砲発射管の他に爆雷をも積み込み、潜水艦に対しても攻撃を加える性能を有している。
 この海戦は、精強なる陸軍部隊の、新たに設定された要線根拠への転進に対し、海軍部隊が果敢なる掩護をなしたものであり、敵に乗ずるの機会なからしめた戦史上極めて重大な意義を持つ海戦であった。
 (現在の戦史ではイサベル島沖海戦とは「ケ号作戦」(駆逐艦部隊によるガダルカナル島からの上陸部隊撤退作戦)の際の交戦を指しており、同作戦は二月一日と四日、七日の三回に分けて実施された。二月一日には駆逐艦十四隻からなる輸送部隊と駆逐艦六隻の警戒部隊がガダルカナル泊地に突入、陸軍兵5,164名と海軍兵250名を収容して離脱した。また、これに先立って行われた航空部隊の攻撃により米駆逐艦「ド・ヘイブン」を撃沈している。四日には一日と同様輸送部隊として駆逐艦十四隻と警戒部隊の駆逐艦六隻がガダルカナルへ突入、陸軍4,458名と海軍519名を収容している。作戦最終日の七日は駆逐艦各八隻で構成された二部隊がガダルカナルへ突入、陸軍2,576名、海軍53名を収容した。この作戦での日本側損害艦は一日に駆逐艦「巻雲」が敵基地機の攻撃により大破ののち触雷して沈没、四日に駆逐艦「舞風」が敵機の攻撃により大破している。この撤収作戦で無事にガ島から撤収できた将兵は一万三千人以上と作戦は成功をおさめたが、この撤収までにガダルカナルでは二万人以上の将兵が戦病死して、文字どおり地獄の戦場となっていたのである。)
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