アドミラルティ”V”型 駆逐艦

Admiralty "V" Class Destroyers

英国海軍 他 イギリス海軍 オーストラリア海軍


HMAS Vampire

HMS Verdun
(上段)「ヴァンパイア」(濠海軍:1942年)/(下段)「ヴァーダン」(1943年)
スペックデータ(竣工時:【 】内は嚮導艦の数値)
排水量:(常)1,090t
     【(常)1,188t】
ボイラー:Yarrow罐・重油専焼×3基
(J. S. White社建造の艦はWhite-Forster罐・重油専焼×3基)
燃料搭載量:重油370t
全長:(全)95.1m 主機:Brown-Curtis式ギヤードタービン×2基、2軸推進
    (William Doxford & Sons社およびSwan Hunter社建造の艦は
      Parsons式ギヤードタービン×2基、2軸推進)
全幅:9.0m
吃水:3.58m
出力:27,000hp
武装:
45口径4inch単装砲4基、45口径3inch単装高角砲1基もしくは40mm単装
ポンポン砲2基、53cm魚雷連装発射管2基(WW1終了後に3連装発射管へ換装)
(第二次大戦時の主要武装については下記本文中を参照のこと)
最大速力:34.0kt
航続距離:15ktで3,500浬
乗員定数:134名

同型艦名(28隻:第二次大戦に参加した20隻のみ掲載)
(嚮導艦:5隻建造、3隻がWW2参加。1隻は濠州海軍
ヴァレンタイン(初代)[Valentine(1)]ヴァララス[Valorous]ヴァンパイア(初代)[Vampire(1)]
(通常型:23隻建造、17隻がWW2参加。1隻は濠州海軍
ヴァンクーヴァ[Vancouver]
(後にヴィミィ[Vimy]と改称)
ヴァネッサ[Vanessa]ヴァナティ[Vanity]
ヴァノック[Vanoc]ヴァンキッシャー[Vanquisher]ヴェガ[Vega]
ヴェロックス[Velox]ヴェンデッタ[Vendetta]ヴァニーシア[Venetia]
ヴァーダン[Verdun]ヴァーサトゥル[Versatile]ヴェスパー[Vesper]
ヴィデット[Vidette]ヴィミエラ[Vimiera]ヴィヴェイシャス[Vivacious]
ヴィヴィアン[Vivien]ヴォーティガン[Vortigern] 

アドミラルティ”V”型駆逐艦について

 第一次大戦中、ドイツ海軍がイギリスの「R」型駆逐艦(1915年度計画艦。第二次大戦中の同名クラスとは異なる)を超える大型駆逐艦(「1916M」型大型水雷艇。1,100トン。10.5センチ砲3門、50センチ魚雷3連装発射管2基)の建造を計画しているとの情報があり、これに対抗できる駆逐艦として1916年に建造発注されたもの。
 英海軍本部(Admiralty:日本海軍の海軍省に相当)で設計が行われ、全部で28隻が建造されている。最初に発注された5隻は嚮導艦としての役割を果たすための装備が施されており、排水量が若干大きい。兵装は「R」型が4インチ(10.2センチ)単装砲を艦の前部、中央部、後部に各1門の計3門、魚雷連装発射管を2基4門搭載しているのに対し、当クラスは4インチ単装砲を背負い式に艦の前後に2門ずつの計4門、魚雷発射管も3連装を2基6門と強化しているが、魚雷発射管については開発が間に合わなかったため、第一次大戦時には従来の連装発射管が搭載された。嚮導艦装備を持たない通常型でも「R」型より船体が拡大しているが、工期を短縮するために「R」型と同じ機関を搭載したので、最高速度は36ノットから34ノットへ低下している。

 第一次大戦で3隻が戦没し、その後1930年代に5隻が除籍(他にオーストラリア海軍へ2隻が譲渡)されているが、第二次大戦が勃発した時点でまだ18隻(オーストラリア艦も含めると20隻)が残存しており、全艦が参戦している。第二次大戦ではいくつかのタイプに兵装を改修されている。高速を発揮し船団の防空などに効果の高い「高速護衛艦型」、対潜・対艦・防空と汎用性のある「短距離護衛艦型」、対潜に特化した「長距離護衛型」の3パターンに改装され、船団護衛や対潜哨戒などに従事したが、元が高速発揮型の艦隊駆逐艦であったため艦構造の劣化が激しく、一部の艦は竣工時の最高速度や航続距離を発揮できなかったという。
 最終的にオーストラリア艦を含め5隻が戦没しているが、生き残った艦も終戦後数年のうちに廃棄されてしまった。

■■ 第二次大戦時に改装された各タイプの艦名およびその主兵装 ■■
【高速護衛艦型】「ヴァレンタイン」「ヴァララス」「ヴァナティ」「ヴェガ」「ヴァーダン」「ヴィミエラ」「ヴィヴィアン」
 4インチ連装高角砲2基、12.7ミリ4連装対空機銃2基

【短距離護衛艦型】「ヴィヴェイシャス」「ヴォーティガン」
 4インチ単装砲3基(当初より1基減)、45口径3インチ単装高角砲1基、40ミリ単装ポンポン砲2基、魚雷3連装発射管1基(当初より1基減)

【長距離護衛艦型】「ヴィミィ」「ヴァネッサ」「ヴァノック」「ヴァンキッシャー」「ヴェロックス」「ヴァーサトゥル」「ヴェスパー」「ヴィデット」
 4インチ単装砲2基(当初より2基減)、45口径3インチ単装高角砲1基、40ミリ単装ポンポン砲2基、ヘッジホッグ投射機1基

なお、「ヴァニーシア」は改装を施されないまま、1940年10月に戦没している。


注意!「このページは同型艦が多いため年表を2ページに分けております。
このページの一番下に2ページ目へのリンクを貼ってあります。」
アドミラリティ”V”型駆逐艦の歴史
ヴァレンタイン(初代)[Valentine(1)] (D40 → L69)
1916年 8月 7日キャンメル・レイアード社にて起工
1917年 3月24日進水
       6月27日竣工
1917年後半機雷敷設設備を追加する工事を実施
工事完了後は本国周辺にて機雷敷設や哨戒任務に従事
1927年予備役艦となる
1939年 9月〜第二次大戦勃発。高速護衛艦への改装工事を実施
1940年 4月〜改装工事完了。再就役し英仏海峡などで護衛任務に従事
       5月15日オランダ・テルヌーゼンの海岸にて独軍機の攻撃を受け沈没
ヴァララス[Valorous] (L00)
1916年 5月25日ウィリアム・デニー兄弟社にて起工
1917年 5月 8日進水
       8月21日竣工
1917年後半機雷敷設設備を追加する工事を実施
工事完了後は本国周辺にて機雷敷設や哨戒任務に従事
1918年11月ロシア内戦のため警備艦としてバルト海へ展開
1921年〜大西洋艦隊や地中海艦隊などに所属
1931年予備役艦となる
1938年高速護衛艦への改装工事を実施(完了は翌年6月)
1939年 9月〜第二次大戦勃発。北海などで船団護衛に従事
1945年 5月対独戦終結。占領任務の支援などに従事
       9月除籍。翌年売却され47年解体処分
ヴァンパイア(初代)[Vampire(1)] (D68)
1916年10月10日J.S.ホワイト社にて起工
1917年 5月21日進水
       9月22日竣工。第4駆逐隊に所属
1918年11月〜本国艦隊や地中海艦隊などに所属
1933年10月11日同年5月オーストラリア海軍へ譲渡。就役
1939年 9月〜第二次大戦勃発。オーストラリア周辺海域の哨戒に従事
      10月〜シンガポール、コロンボを転戦。同年12月地中海艦隊へ転属
1940年〜地中海にて船団護衛や警備任務に従事
1941年 6月〜インド洋へ転戦。同年7月からシンガポールにてオーバーホール
      12月〜東洋艦隊へ転属。対日戦勃発後はZ部隊に配属
      12月10日日陸攻と交戦(マレー沖海戦)。沈没した英戦艦の乗員救助を実施
      12月後半〜インド洋などで船団護衛に従事
1942年 1月27日シンガポール沖にて日駆逐隊と交戦
       4月 9日セイロン島(現スリランカ)へ迫る日機動部隊迎撃のため出撃
       4月10日セイロン島東方沖にて日艦爆の攻撃を受け沈没(セイロン島沖海戦)
ヴァンクーヴァ[Vancouver](→ヴィミィ[Vimy])(D33 → I33)
1917年 3月15日ビアドモア造船にて起工。当初艦名は「ヴァンクーヴァ」
      12月28日進水
1918年 3月19日竣工
1918年前半機雷敷設設備を追加する工事を実施
工事完了後は本国周辺にて機雷敷設や哨戒任務に従事
1918年11月ロシア内戦のため警備艦としてバルト海へ展開
1921年〜大西洋艦隊や地中海艦隊などに所属
1928年 4月予備役艦となる。艦名を「ヴィミィ」と改称
1939年 8月予備役艦隊に再就役
       9月〜第二次大戦勃発。英仏海峡周辺の哨戒任務に従事
1940年 1月〜本国周辺や北海などで船団護衛に従事
1941年初頭長距離護衛艦への改装工事を実施(完了は同年5月)
       6月〜戦線へ復帰。大西洋や本国周辺などで船団護衛に従事
       9月20日大西洋にて船団護衛中、敵潜水艦を攻撃。損傷を負わせたと評価
(他艦と共同)(伊潜「ルイジ・トレリ」であると推定)
       9月21日大西洋にて船団護衛中、敵潜水艦を攻撃し撃沈する
(伊潜「アレッサンドロ・マラスピナ」であると推定)
1942年 9月初頭西インド諸島防衛のため西インド諸島艦隊へ転属
       9月 3日バルバドス島南方沖にて独潜「U-162」を攻撃・撃沈(他艦と共同)
      11月〜大西洋方面の船団護衛に従事
1943年 2月 4日北大西洋にて船団護衛中、独潜「U-187」を攻撃・撃沈(他艦と共同)
1944年 4月〜南仏上陸作戦のため、上陸船団護衛に転属
       6月ノルマンディ上陸(ネプチューン作戦)を支援
       7月〜英仏海峡にて船団護衛や対潜哨戒に従事
1945年 5月欧州戦線の戦闘終結後、退役
1946年除籍。翌年スクラップとして売却され、48年解体処分
ヴァネッサ[Vanessa] (D29)
1917年 5月16日ビアドモア造船にて起工
1918年 3月16日進水
       4月27日竣工(6月21日説あり)
1921年12月予備役艦となる
1939年 9月〜第二次大戦勃発。再就役し本国周辺などで船団護衛に従事
1940年 7月13日英仏海峡付近で独軍機の攻撃を受け損傷を負う
      12月〜修理完了後、大西洋などで船団護衛に従事
1941年 9月〜長距離護衛艦への改装工事を実施(完了は翌年6月)
1942年 8月〜大西洋などで船団護衛に従事
      12月26日アイルランド沖にて独潜「U-357」を攻撃・撃沈(他艦と共同)
1944年 2月〜標的艦への改装工事を実施(完了は同年6月)
       7月〜標的艦として訓練任務に従事
1945年 9月?第二次大戦終結により予備役艦となる
1947年 3月 4日スクラップとして売却。49年2月解体処分
ヴァナティ[Vanity] (D28 → L38)
1917年 7月28日ビアドモア造船にて起工
1918年 5月 3日進水
       6月21日竣工
1921年12月予備役艦となる
1939年 9月〜第二次大戦勃発。再就役し本国周辺や北海などで船団護衛に従事
      10月〜高速護衛艦への改装工事を実施(完了は翌年6月)
1940年 7月〜本国周辺や北海などで船団護衛や哨戒任務に従事
1945年 2月〜英仏海峡にて哨戒任務や船団護衛に従事
       5月欧州戦線の戦闘終結後、退役
1946年除籍。翌年スクラップとして売却され、48年解体処分
ヴァノック[Vanoc] (H33)
1916年 9月20日ジョン・ブラウン造船にて起工
1917年 6月14日進水
       8月15日竣工(1918年8月とする説があるが、資料の誤植と思われる)
1920年代予備役艦となる
1939年 8月予備役艦隊に再就役
       9月〜第二次大戦勃発。英仏海峡周辺の哨戒任務に従事
      10月〜イギリス海峡や欧州南西部沖にて船団護衛などに従事
1940年 4月〜本国艦隊へ転属。本国周辺や北海などで船団護衛に従事
       6月〜ノルウェー戦後は北大西洋などで船団護衛に従事
1941年 3月17日アイスランド近海にて独潜「U-100」を攻撃・撃沈(他艦と共同)
1942年10月〜トーチ作戦に参加。北アフリカ上陸を支援
1943年 1月〜大西洋にて船団護衛に従事
       4月〜長距離護衛艦への改装工事を実施(完了は同年10月)
      12月〜大西洋などで船団護衛に従事
1944年 3月16日ジブラルタル海峡付近にて独潜「U-392」を攻撃・撃沈(他艦・航空機と共同)
1945年 1月27日ノルマンディ沖にて英掃海艇「コンピュテーター」[Computator]と衝突、損傷を負う
(「コンピュテーター」は沈没した)
       6月欧州戦線の戦闘終結。再占領などを支援後に退役
       7月26日スクラップとして売却。翌年解体処分
ヴァンキッシャー[Vanquisher] (D54)
1916年 9月27日ジョン・ブラウン造船にて起工
1917年 8月28日進水
      10月 2日竣工
1920年代地中海艦隊や大西洋艦隊などで任務に従事
1938年第1対潜戦隊へ転属
1939年 9月〜第二次大戦勃発。英仏海峡周辺の哨戒任務に従事
       9月11日アイルランド南西沖にて英駆「ウォーカー」と衝突、損傷を負う
1940年 4月〜ノルウェー戦やダンケルク撤退(ダイナモ作戦)支援を実施
       7月〜大西洋にて船団護衛に従事
1942年 9月〜長距離護衛艦への改装工事を実施(完了は翌年4月)
1943年 6月〜大西洋にて船団護衛に従事
1945年 4月10日ビスケー湾にて独潜「U-878」を攻撃・撃沈(他艦と共同)
       5月欧州戦線の戦闘終結後、退役
1947年 5月 4日スクラップとして売却。翌年解体処分
ヴェガ[Vega] (D52 → L41)
1916年12月11日ドックスフォード造船所にて起工
1917年 9月 1日進水
      12月14日竣工
1920年代予備役艦となる
1939年高速護衛艦への改装工事を実施
      10月〜再就役。本国周辺および北海にて船団護衛に従事
1940年 4月〜英仏海峡の封鎖任務に従事
       7月〜北海にて船団護衛に従事
      11月11日ハリッジ沖にて触雷、艦首切断の損傷を負う
(修理を実施。修理完了は42年11月)
1942年末〜戦線へ復帰。北海などで船団護衛や哨戒任務に従事
       6月欧州戦線の戦闘終結。再占領などを支援後に退役
       8月第二次大戦終結後、退役
1947年 3月 4日スクラップとして売却。同月末解体処分
ヴェロックス[Velox] (D34 → I34)
1917年 1月 1日ドックスフォード造船所にて起工
      11月17日進水
1918年 4月 1日竣工
1918年中盤機雷敷設設備を追加する工事を実施
工事完了後は本国周辺にて機雷敷設や哨戒任務に従事
1930年代初頭予備役艦となる
1939年再就役。ジブラルタルへ配備される
       9月〜第二次大戦勃発。ジブラルタル周辺にて船団護衛や哨戒任務に従事
1940年 7月〜地中海側のフランス軍港監視や英H部隊の警護などを実施
1941年 1月〜大西洋やジブラルタル周辺にて船団護衛などに従事
1943年12月〜長距離護衛艦への改装工事を実施
同年4月に標的艦への改装工事も実施(完了は翌年5月)
1944年 7月〜標的艦として訓練任務に従事
1945年 8月第二次大戦終結後、退役
1947年 2月18日スクラップとして売却。同年11月解体処分
ヴェンデッタ[Vendetta] (D69 → I69)
1916年11月フェアフィールド造船にて起工
1917年 7月 3日進水
      10月17日竣工。本国艦隊に所属
1918年末〜第一次大戦終結後は大西洋艦隊へ転属
1925年〜地中海艦隊へ転属
1933年10月11日同年5月オーストラリア海軍へ譲渡。就役
1939年 9月〜第二次大戦勃発。オーストラリア周辺海域の哨戒に従事
      10月〜シンガポールへ転戦。同年12月地中海艦隊へ転属
1940年〜地中海にて船団護衛や警備任務に従事
      12月〜北アフリカ攻撃の支援などを実施
1941年11月〜インド洋へ転戦。同年12月東洋艦隊へ転属
1942年 2月シンガポールでオーバーホール中、日本軍の侵攻をおそれ味方艦に曳航され脱出
       4月〜メルボルンにて護衛艦への改装工事を実施(完了は翌年4月)
1943年 5月〜オーストラリア近海にて護衛や対潜哨戒に従事
1944年 4月〜太平洋南西方面へ転戦。輸送や対地攻撃支援に従事
1945年 1月〜オーストラリア近海にて訓練任務に従事
       8月対日戦終結後は英太平洋艦隊指揮下でソロモン諸島の占領任務に従事
      11月17日退役。後にスクラップとして売却。船体は48年に自沈処分

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