歩兵戦車Mk.IV チャーチル (A22)

Infantry Tank Mk.4 "Churchill" (A22)

英国陸軍 1941年

チャーチル
75mm砲を搭載したチャーチルVI

下記写真はデアゴスティーニ社発行「隔週刊 コンバット・タンク・コレクション」付属の模型です(クリックで拡大(要Javascript))
チャーチル
第49号(2014.04.29)
「チャーチルMk.VII」1944年


 当初マチルダ歩兵戦車の後継の陣地突破用戦車として開発が開始されたA20試作戦車だったが、第二次大戦が始まり西部戦線において第一次大戦同様に敵陣を蹂躙する戦車が必用となるであろうと考えられたため、第一次大戦時のひし形戦車に似たスタイルのA20は西部戦線用に開発方針を変更された。
 しかし重量過大と速度不足、さらに第一次大戦風の古い兵器思想からA20は時代遅れと見なされ、量産化は見送られた。だが戦争が始まって戦車が一台でも多く欲しい状態だったため、開発担当会社を変更し新しい仕様のA22として開発は継続された。
 試作車の完成と同時に歩兵戦車Mk.IVとして制式化され500両の発注を受けたが、時の英国首相チャーチルが「A22は他の戦車に比べて優秀であるから、生産を優先せよ」との指示を出したため生産は急ピッチで進められ、この戦車を引き立てたチャーチルの名が戦車にも冠された。
 フランス風のコイルバネ式小転輪をならべたサスペンションにボルト・リベット留め装甲(後期型は溶接になった)を施し、トラック用6気筒エンジン2基を組み合わせた水平対向12気筒エンジンが搭載されている。このエンジンは重量の割に出力が小さく信頼性も低かったが、車載状態でのトルクは非常に大きく、当戦車に驚くほどの登坂能力を与えることとなった(この優れた登坂能力によりドイツ軍が想像もしなかった方向からの進撃を行い戦況を有利に導いた戦場もあった)。
 1942年のディエップ上陸作戦から実戦参加した当車だったが、装甲はともかく砲火力はドイツ戦車に勝るところが無かったため、大戦末期には火炎放射戦車や架橋戦車、近接支援戦車などの特殊型に改造されたものも少なくないが、後期に生産された大口径砲搭載車両は朝鮮戦争にも参加し、1960年代まで配備が続けられていた。

スペックデータ(チャーチルIII)
全長 7.42m全高 2.49m
全幅 3.25m重量39.6トン
最高速度24.9km/h行動距離145km
発動機ベドフォード水冷水平対向12気筒ガソリンエンジン 175馬力×2基(計350馬力)
乗員数5名総生産数5,600両
武装6ポンド(57mm)戦車砲×1、ベサ7.92mm機銃×1
最大装甲厚(上面)16mm〜(前面)102mm
派生改良型 A22:陸軍での開発名称
歩兵戦車Mk.IV:Churchill I。初期生産型。砲塔に2ポンド戦車砲、車体前面に76.2mm榴弾砲を搭載
Churchill II CS:Churchill Iの砲配置を逆にしたモデル(砲塔76.2mm榴弾砲、車体2ポンド戦車砲)
Churchill II:設置位置が悪く役に立たなかった76.2mm榴弾砲を廃止。以降のモデルは機銃を搭載
Churchill III:砲塔に6ポンド戦車砲を搭載し砲塔を溶接構造化。履帯上部にフェンダーが着いた
Churchill IV:砲塔が鋳造構造である以外はChurchill IIIと同じ
Churchill IV NA75:北アフリカ戦線での現地改造型。シャーマンの75mm砲を無理矢理搭載した
Churchill V:Churchill IVの主砲を95mm榴弾砲に変更した近接支援型
Churchill VI:Churchill IVの主砲を75mm戦車砲に変更した火力強化モデル
Churchill VII:車体拡大、新型砲塔、75mm戦車砲など改良を加えられたモデル。後期主要生産型
Churchill VIII:Churchill VIIの主砲を95mm榴弾砲に換装した近接支援型。少数配備
Churchill IX:Churchill IIIにVII同様の砲塔と75mm砲を載せ換え、増加装甲を追加した車両
Churchill X:Churchill IX同様の改造を施したChurchill IV。軽量型砲塔のX LTもある
Churchill XI:Churchill IX同様の改造を施したChurchill VI。軽量型砲塔のXI LTもある
Churchill AVRE:突撃工兵部隊専用に改造されたChurchill III/IV。砲塔に290mm迫撃砲を搭載した
Churchill Oke:Churchill IIIにOke火炎放射器を搭載した試作型。ごく少数が作られたのみ
Churchill Crocodile:量産型の火炎放射戦車。Churchill VIIの車体がベース
Churchill AMRA Mk.IIe:地雷処理装置AMRAを装備した車両
Churchill AMRCR:地雷探査処理装置AMRCRを装備した車両
Churchill CIRD:カナダ陸軍が開発した地雷処理装置CIRDを装備した車両
Churchill Carrot:爆破式地雷処理装置を装備した車両。試作のみ
Onion:車体前部に障害物爆破用の爆薬設置装置を搭載した車両。工兵支援用
Goat:CarrotやOnionの発展型である爆破処理装置を搭載した車両。複数モデルあり
Ardeer Aggie:AVREの砲強化型。無反動砲を搭載したが非実用的だったので試作のみ
地雷処理鍬装備車:地雷原を掘り起こす鍬(すき)を装備した車両。複数モデルあり
カーペット敷設車:歩兵などが泥濘地や有刺鉄線を越えるためのカーペットを敷設する車両の総称
Mk.II SBG AVRE:カナダ陸軍開発の架橋戦車。約10mの橋桁を架橋可能