フランスのフーガ社(後にアエロスパシアル社に吸収)が開発した世界最初のジェットエンジン搭載基礎練習機。
1948年にフーガ社がフランス航空省に提出したCM.130R軽ジェット練習機の計画が元となっている。
CM.130Rの設計では推力150kgのチュルボメカ・パラス型ターボジェットエンジンを2基搭載するよう
になっていたが、大柄で重い装備を着けた操縦士2名が搭乗して飛行するには能力不足であったため、機体寸法を
拡大しエンジンを強化・全金属構造に改設計したCM.170Rの設計を再提出し、1950年12月に原型機開
発契約を得ることができた。ちなみに機名を表すCMはフーガ社の技術部長ロベール・カステロと航空部長ピエー
ル・モブサンの二人の頭文字を取ったものである。
それまでソアラー(動力付き高級グライダー)の設計を主にしていたフーガ社が設計しただけあって翼長の長い
主翼と短い降着装置それにV字型の垂直尾翼が特徴となっているこの複座練習機は、快適な乗り心地と思い通りに
動かせる操縦性が受け、フランス空軍に即時採用となった(ただし、生産前機の運用結果から兵装搭載装備が追加
されることになったが)。
フランス以外にも西ドイツ・オーストリアなどのヨーロッパ諸国やブラジル、イスラエル、コンゴなどにも採用
され、西ドイツやイスラエル、フィンランドではライセンス生産も行われた。
操縦性の良さから空軍や国立の曲技飛行チームでも使用され、フランスの『ラ・パトルーユ・ド・フランス』やブ
ラジルの国営曲技飛行チーム、ベルギーの『赤い悪魔』などでも長年使用されたが、現在は全機が退役済みである。
機体詳細データ(CM.170−1) |
寸法(L×W×H/翼面積) | 10.06×12.15×2.80m / 17.3m2 (全幅は翼端増加燃料タンクを含む) |
機体重量(自重/全備) | 2,150kg / 3,200kg |
飛行速度(最大) | 715km/h(9,100m) |
上昇率(海面上) | 1,020m/min |
上昇限度(実用) | 11,000m |
離着陸距離(離陸/着陸) | 不明 |
航続距離 | 930km(若干の燃料余裕を見込んだ距離) |
エンジン | チュルボメカ社製 マルボレIIAターボジェット×2基 推力 400kg×2 |
武装 | 7.5ミリまたは7.62mm機銃×2(弾数各200)、翼下にロケット弾ポッド×2、50kg小型爆弾×2、AS−11対地ミサイルなどを搭載可能、翼端に増加燃料タンク×2 |
乗員数/機体初飛行 | 2名 / 1952年7月23日(原型機) |
備考(各タイプ詳細) |
CM.170R:機体計画案の名称
CM.170:原型機の呼称。マルボレIIエンジンを搭載(3機製作)
CM.170-1:生産前および量産型機。マルボレIIAエンジン搭載(761機)
CM.170-2:マルボレVIエンジン搭載の強化型。シュペル・マジステール(137機)
CM.175:着艦用フックを持つ海軍型。CM.170−1相当(32機)
Fouga 90A:CM.170の後継機として計画された機体。試作のみ |